【講師ver】 No.8 内発的動機付けと学習意欲の発達 レポート

『内発的動機付けと学習意欲の発達』を踏まえた思考整理レポート 

村上心優

 

 

外発的動機づけと内発的動機づけは、勉強をはじめとした様々な自己実現を行う上で非常に重要である。一般的には、賞罰に依存する行動が前者で、そうでないものが後者と捉えられることが多いだろう。しかし動機づけの種類とは、このようにはっきりと二分できるものではない。

論文内では、これまでで外発的動機づけと内発的動機づけをさらに細かく捉え直す研究が数多く行われていることが述べられているが、ここで私がそれを述べたところで繰り返しになってしまうため、割愛させていただく。私が特に注目すべきだと考えた項目は、コンピテンス動機づけである。コンピテンス動機づけは、外発的動機づけ及び内発的動機づけを含む全ての学習意欲の背後に存在するものであり、かなり包括的な概念として位置付けられている。



〇コンピテンス動機付け

そもそもコンピテンスとは、社会的能力を表す言葉である。さまざまな経験(学習環境、勉強内容など)を通して身につけることが可能な能力のことを指す。私は、コンピテンス動機付けとは、自身に成長や問題解決をするための能力があると感じられることで発生するものであると捉えた。言わば「自己効力感」である。あえて俗な言い方をするならば「やればできる感」といった具合だろうか。

自身の思考や行動がそのまま自身の成功につながると感じられることは、非常に重要である。具体的には、生徒本人にToDoを考えさせる場面や、生徒自ら志望校を決定(するように促)し、それを目標として努力させる場面などは、自己効力感が重要な役割を果たしていると言えるだろう。さらに単純な例で言えば、「ToDoを終わらせることができそうだ」と生徒自身が感じられるかそうでないかは、計画通りの学習を進め(させ)る上で非常に重要である。



〇モチベーション

動機づけは「モチベーション」と呼ばれることも多く、なじみ深い言葉として扱われている。しかしこれは、目に見えるものでもなければ基準が明確なものでもない。例えば生徒が、「モチベが上がった」という旨の主張をしていたとして、我々講師はその言葉が真実かどうか、自己実現や目標達成に対してどの程度有効なのかを正確に捉えることは難しい。ましてその言葉を放った生徒自身で、その上がったモチベーションが外発的なものなのか、それとも内発的なものなのかを考えるケースは稀だと言えるだろう。

とはいえ、学習意欲の維持及び向上にモチベーションは欠かせない。生徒が目標達成のために努力を重ね続けなければならない最後の瞬間までに、いかに多くの回数、時間で動機づけが行えるかは非常に重要である。モチベーションを湧きやすく、保ちやすいものだと捉えられるようにすることが、学習意欲増進の近道である。つまり、自分でやる気をコントロールする力をつけられる(と自覚する)ことは、生徒にとって大きな強みになるということだ。



〇HR作業会を通して考える動機づけの在り方

現在、橿原校舎では週に一度、HR作業会を行っている。テキストの内容を説明し、実際に生徒たちがそれを実践する。この作業会を運営していく上で、生徒がどうなることを目指すべきなのか、どのような力を身につけることをゴールとするべきなのかを、動機づけの観点から考える。

まず、作業会という場そのものは、「外発的動機づけの場」と言ってもほぼ差し支えないだろう。週に一度、同じ時間に新3年生全員を集める。進捗度に差はあれど、殆ど同じワークをさせる。今後の形態や運営がどうなるか不明瞭ではあるが、現状はかなり強い強制力をはたらかせた形態をとっている。それは、内発的動機づけは外発的動機づけなくして生まれないことと、自己効力感の作り方を学んでもらうのが目的であることが理由である。

・外発的動機づけ➡内発的動機づけ

冒頭で述べたように、外発的動機づけとは一般的に賞罰に依存する行為である。学習意欲が賞罰ありきのものになってしまうこと、自らの意思で意欲を向上させられないことは問題である。そのため、外発的動機づけよりも内発的動機づけのほうが優れているというのが一般論である。しかし、外発的動機づけなくして内発的動機づけを行うことは不可能である。なぜなら、何のきっかけもなく突然自らの意思で努力することは難しいからである。外発的動機づけは決して悪ではない。外発的動機づけという伴走の多い道を行く過程で、自らの足で歩む術を知り、それが徐々に内発的動機づけへと移行していく。

内発的動機づけをさらに細分化する。この塾の教育理念を踏まえた上で「人生で、夢や目標を叶えたいから学ぶ」という思考や、単純に「大学受験という状況がこの力を要するから学ぶ」といった思考からなる状況必然的学習意欲を高めることを目指していきたい。

 

・自己効力感の作り方

 「やればできる感」もとい自己効力感を高めるには、成功体験が鍵となる。大前提として、方法や要旨を理解しないままに成功体験を積むことは不可能である。経験のないことで成功体験を積むには、練習することが最も効果的である。

そのために、まずは目の前で方法を提示する。そして実際に体験をする。作業会は、いわば講義室兼練習場のような位置づけである。ここで必ずしも成功体験を積まなければならないというわけではない。このタイミングで、「この方法を使えばいずれうまくいきそうだ」という「プレ成功体験」を得られるように働きかける。この時点では、生徒が自身で行った作業の結果が、成功に繋がろうが失敗に転ぼうが構わない。プレ成功体験さえできれば、あとは本当の成功体験に向けて、実際の生活内で試行錯誤を繰り返すのみとなる。そのためには、試行錯誤や失敗を歓迎する環境づくりも忘れてはならない。

 

・モチベーションのコントロール

 上記2項目では、内発的動機づけが優れているとされる中で、作業会における強制力を大きくしている理由の核となる要素について述べた。この項目では、作業会を行うことで身につけてほしい考え方について述べる。

 モチベーションとは、学習意欲の根源である。そのため、可能な限り長く高い状態でモチベーションを維持することは、目標到達までの時間を縮めることに直結する。しかし、そのモチベーションはどうすれば高まるのか、維持できるのかは十人十色である。

 そこで、上記項目「自己効力感の作り方」の応用的発想を行う。生徒が自身のモチベーションを自力でコントロールする力を身につけることで、「自分はこういう人間なのだから、この行動・対策を講じればうまくいく」という成功体験の根本(プレ成功体験)を作ることができるため、学習の質及び量を確保する上で非常に有効なものになると考えた。「自分は何を目指したいのか」「何なら頑張れるのか」「モチベーションが下がるのはどんなときか」「それはどうすれば避けられるのか」「なぜ頑張りたいのか」というように、自身の行動の源、大げさに言うと人生観を知ることで、自身を容易に管理できるようになる。ここで他者依存に陥らないようにすることも、内発的動機づけ優位にするために重要である。

 

〇総括

私が生徒に求める力

■自分にできる方法を生み出す力(「やればできる感」もとい「自己効力感」の自己生産)

■自分の機嫌を自分でとる力(他者依存のないモチベーション維持)

 

挫けない力

これまでの考察より、作業会を始めとする場において、私が生徒に求めたい力を一言で表すなら「挫けない力」であると結論付けた。そのため、うまくいかないことや困難なことがあっても、諦めたり自棄になったりするのではなく、「どうすればうまくいくのか」という前向きな思考のサイクルを回せるようになるための手助けをする場として作業会を運営していきたい。そして、生徒が歩むスピードを緩めたり、勢いが弱まったりすることがないように促すための働きかけを、講師側も挫けることなく行っていきたいと考えた。

〇参考にしたサイト

(専門機関の記事ではないが、どちらも分かりやすく興味深い内容が語られているサイトであるため、ご容赦願いたい。)

http://o616o633.xsrv.jp/category1/entry22.html

https://www.motivation-cloud.com/hr2048/c240#:~:text=%E8%87%AA%E5%B7%B1%E5%8A%B9%E5%8A%9B%E6%84%9F%E3%81%A8%E3%81%AF%E3%81%82%E3%82%8B%E7%8A%B6%E6%B3%81%E4%B8%8B%E3%81%A7%E7%B5%90%E6%9E%9C,%E3%81%A8%E3%82%82%E5%A4%A7%E3%81%8D%E3%81%AA%E9%96%A2%E4%BF%82%E3%81%8C%E3%81%82%E3%82%8A%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82