【講師ver】 No.7 内発的動機付けと学習意欲の発達 レポート
内発的動機づけと学習意欲の発達
米田奈海
1,内発的動機づけと学習意欲の理論
(1)内発的動機づけと外発的動機づけ
A、認知的動機づけによる概念化(内発的動機づけ研究の原点)
【内発】情報収集とその体制化が目標
【外発】一次的欲求の充足が目標
※生理的欲求に源泉があると考えられている学習でも、環境と関わるプロセスで情報処理をする。対立しているが、並存しているといえる。
B、手段性―目的性
【内発】自己目的性 例)数学者になりたい、テストで点数を取りたい
【外発】手段性、道具性 例)テスト勉強をする
※目的のための手段という風にとらえることが出来るため、簡単に区別できない
内発的と外発的の考え方は、AとBを合わせた捉え方が適切だと考えられている。
Aの意義:「環境と相互作用しながら学ぶ」という人間の学習過程の特質を説明する概念として内発が積極的に位置づけられている
Bの意義:特定の動機を前提として置かず、内容的な制限がない
【内発】自己目的な学習の生起・維持過程であり、熟達指向性(好奇心、挑戦)と自律性(自己決定)という特徴を併せ持つもの
内容必然性(学ぶ内容によって意欲が引き起こされるという性質)
【外発】他者を煽ぐ遂行を達成する目的で活動に従事する(自我志向性、遂行目標)
外的報酬を獲得する、あるいは外的な罰を回避するために活動に従事する
条件必然性(外敵に存在する条件によって意欲が引き起こされるという性質)
(2)内発的―外発的動機づけと関連する概念
A、コンピテンス
環境に対処する内的な要求を満たす動機付けのこと
(児童では未分化→認識➣創造→熟達→達成という動機に分化していく)
【内発】課題を成し遂げる過程における満足感のような自己反応によって支えられる。
【外発】自己イメージ、圧迫感、緊張のような感覚、他者によって成功が認められるといった社会的反応によって支えられ、遂行結果に焦点が向けられる。
B、達成動機
障害を克服し、能力を働かせ、困難なことを可能な限り早く上手に成し遂げるように努力するような欲求
(競争事態での成功、卓越水準の達成、達成のユニークさ、長期にわたる達成への努力)
C、目標理論・目標志向性
・目標
課題に対する熟達(学習目標)
他者や自己に対する有能さの提示が目指される(遂行目標)
他者を喜ばせる(外発的報酬)
D、学習動機(なぜ学ぶのか、何のために学ぶのかという学習に関する理由付け)
1,課題志向:課題を解決すること自体が目的
2,能力志向:自分が能力を持った人間であることを示すことが目的
3,友人承認志向:友人の承認を求めたり、否認をさけることが目的
4,成人承認志向:教師、親に対して承認を求める、否認を避ける、言いつけに従う
5,承認志向動機:教師や親からの承認を望む、強制や命令に従う、叱責を回避するために勉強する
6,理解志向動機:好奇心、向上心によって勉強する
7,内的動機:学習すること自体が目標になっている
8,外的動機:褒められたいから、叱られたくないから、勉強するように言われるから
9,外生的動機:友達に勝ちたい、負けたくない、いい成績がとりたい、悪い成績がとりたくない
学習内容の重要性と賞罰の直接性
1,充実志向(学習内容が面白い)→学習目標
2,訓練志向(頭を鍛えるため)→内発
3、実用志向(仕事や生活に生かす)→手段としての学習(内容必然性、内発)
4,関係志向(他人につられて)→人間関係に基盤を持つ、外発
5,自尊志向(プライド、競争心)→遂行目標
6,報酬志向(報酬を得る手段として)→手段としての学習(条件必然性、外発)
※1~3は学習内容を重視
4~6は軽視
1、4は賞罰の間接的な動機
3,6は直接的
2,5は中間
まとめ
学習動機4つ
1,学習目標の内容を持つ(課題志向、理解志向動機、内的同期、充実志向)
2,遂行目標の内容を持つ(能力志向、外生的動機、自尊志向)
3,人間関係に基盤を持つ(友人承認志向、成人承認志向、外的動機、関係志向)
4,手段として学習するという条件必然的(現実志向動機、報酬志向)
(3)学習意欲をどのようにとらえるか
学習意欲:学習活動を引き起こす人間の内部的動機の総称
学習意欲の源泉3つ:
1,内容必然性(~学びたくて学ぶ)→内発、学習目標
2,条件必然的(人間関係、生活の場、社会制度が要求するので学ぶ)
3,自己必然的(肯定的な自己概念獲得のために学ぶ)
※1,3の差は学習内容との関連によって生じる有能間、挑戦、向上心
2,3の差は他者との比較や競争事態との関連によって生じる有能感、挑戦、向上心
2の人間関係等と条件等の差は身近なものによる報酬(親に叱られる等)に基づく
※1つしかないわけではなく、3つ全て濃淡があって個人の中に存在している
2、学習意欲の発達と統合
(1)心理的必然性と学習意欲の発達
学習意欲の区分4つ:
1、内発的学習意欲
2,賞罰による学習意欲
3,規範意識による学習意欲
4,自己目標実現のための学習意欲
※小学校低学年は2が優勢、小学校中学年は1→3が優勢、その後は4が優勢になる
※高校生、大学生と成長するに従い、学習動機の構造が発達的に変化し、複数の目標を同時に目指したり、質の異なる動機が次第に統合していく
※発達の過程には他者、文化が関与している
※自己決定の低い順(内面化されていない順)
報酬や罰(外的調整)→自尊心、他者からの承認、罪の意識、不安(取り入れ的調整)
→重要性の認識、自らの価値と選択(同一視)→様々な領域で柔軟で一貫した動機(統合)
自己必然的学習意欲
1,自己知識の要求(自己の特質、能力に関する正確な証拠を求める欲求)
2,自己高揚(快を求め、苦痛を避けるという基本的な欲求が基盤)
3,自己改善(なりたい自己に近づく、達成)
※年齢が上がるにつれ、大人など外的な基準より内的な独自の基準が重視される&外的評価と自己評価が一致するようになっていく
(2)学習意欲の統合
〇学習意欲の発達と統合について
・内容、状況、自己の3つの心理的必然性を源泉とする学習意欲は
「問い続ける姿勢」「社会的・文化的価値の内面化」「自己評価の絶対基準の確立」
へむかって発達し、これらは相互に統合しあう
・内容、状況、自己のどれかのこだわりを出発点にし、学習意欲が発達する。その過程で学ぶ内容や行為に価値を見出すようになり、意欲のあり方が人格形成の方向性を指し示すようになる
〇最近は
・外発が内発を促進する
例)もともとは好まない、することが望まれ、教えられたからやってきたこと(外発)
➣態度、信念、行動調整を受け入れ、自分自身の価値や目標に変換する(内面)
※年齢が成長していくと外発が内発に変化していく
・個人志向性が個人本意で自分に正直な生き方から、個性を生かしつつ自分独自の道を主体的に施行する自己実現的な生き方へ変化する
・他者を意識した他律的な生き方から、他者との共感や社会での役割を主体的に施行するという自律的共存へと移行する
➣それぞれの発達、バランスのとれた統合が必要
【感想】
漠然としたイメージで、外発的動機づけよりも内発的動機づけの方がいい動機づけだという考えがあったが、そもそも内発と外発が単独で存在はしていないということを再確認した。
内発的として使える例は、
・将来の夢
・なりたい仕事
・興味のあるジャンル
・やってみたいこと(英語を話せるようになりたい等)
外発的として使える例は
・~が出来たら〇〇あげる(食べ物等報酬)
・~ができなかったら〇〇する(罰)
が先に思いつくものであるが、もっと細かく考えていくと
内発的に使える例は、
・todo達成したい
・目標達成したい
外発的に使える例は
・面談でほめられたい
・面談で叱られたくない
・周りの友達、親、先生に認められたい
・友達に勝ちたい
・順位を上げたい
・担当講師、親を喜ばせたい
ということも内発的、外発的動機づけだと考えられる。
学ぶことの動機づけも種類があり、
・できなかった教科をできるようにしたい、解けない問題を解けるようになりたい
・自分が周りの人と比べて優れている人間だと証明したい
・友達に見下されたくない、出来ないやつだと思われたくない
・親に認められたい
・もっと学力を上げたい
・将来の仕事、生活に生かしたい
・友達が頑張っているから一緒に頑張りたい
など、学習の内容自体、目標自体、人間関係、目的を達成するためなど様々な動機が考えられる。
学習内容に重点が置かれている動機から、学習から離れた動機まであるが、生徒の中では人それぞれ重要度が異なる。動機づけの内容によっては自己決定の高さや動機の強さも変化する。まず生徒の背景(家庭環境、学習環境等)を理解し、今、生徒が何を求めていてどういう風に動機づけをすると一番モチベーションが上がるのかを複数の視点から考えて面談準備をすることが必要だと感じた。時期によっても生徒が求める一番の欲求が異なると思うので、日々相手の情報を取り、今何を言えば一番刺さるのかを考え続けるようにしていこうと思った。